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最終更新日 2020/2/18
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 問題32


A社はB社に対して貸金債権を有しており、B社はA社に対して売掛金債権を有している。この場合に関する次の①~④の記述のうち、その内容が適切なものを1つだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。なお、A社とB社との間に相殺についての特段の合意はないものとする。

① A社は、B社が破産手続開始の決定を受けた場合であっても、原則として、破産手続によらないで貸金債権と売掛金債権とを対当額で相殺することができる。

② A社が、相殺によって、その対当額について、B社のA社に対する売掛金債権の支払いを免れるためには、A社からB社に対する相殺の意思表示をしなければならず、A社がB社に相殺の意思表示をした場合、相殺の効力は、当該相殺の意思表示がなされた時点で生ずる。

③ A社のB社に対する貸金債権の弁済期が到来している場合であっても、B社のA社に対する売掛金債権の弁済期が到来していないときは、A社は、両債権を対当額で相殺することができない。

④ B社に対して金銭債権を有するC銀行が売掛金債権を差し押さえた場合、当該差押えの時期とA社がB社に対して有する貸金債権を取得した時期との先後を問わず、A社は、もはや貸金債権と売掛金債権とを相殺することができない。






 問題32 解答・解説
「相殺(民法、破産法)」に関する問題です。
(改訂第9版合格教本のP270、P215・216参照)
(第8版の合格教本をお持ちの方は、P268、P213・214参照)

※ 法改正により解説を変更しました。


①:○(適切である)
 破産債権者は、
破産手続開始の時において破産者に対して債務を負担するときは、破産手続によらないで相殺をすることができます。
 よって、破産債権者であるA社は、破産者であるB社に対して債務を負っているため、B社の破産手続開始の決定があっても、原則として、破産手続によらないで相殺することができます。


※ 改訂第9版合格教本P270の表「▼別除権・相殺権」参照。

②:×(適切でない)
 相殺の意思表示は、相殺適状の時(双方の債務が互いに相殺に適するようになった時)にさかのぼってその効力を生じます。相殺の意思表示がなされた時点で生じるわけではありません。


※ 改訂第9版合格教本P216「(2)相殺の方法および効力」参照。

③:×(適切でない)
 
自働債権の弁済期が到来していれば、受働債権の弁済期が到来していない場合であっても、相殺することができます。
 よって、貸金債権(A社のB社に対する債権)の弁済期が到来している場合、売掛金債権(B社のA社に対する債権)の弁済期が到来していないときであっても、A社は相殺することができます。


※ 改訂第9版合格教本P215「(1)相殺の概要」参照。

④:×(適切でない)
 差押えを受けた第三債務者は、
差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができませんが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができます。
 よって、C社が売掛金債権(B社のA社に対する債権)を押さえた場合、A社(第三債務者)は、その差押え後に取得した貸金債権をもってC社(差押債権者)に対抗することはできませんが、差押え前に取得した貸金債権をもってC社に対抗することはできます。


※ 改訂第9版合格教本P216の表「▼相殺の可否」の「差押えと相殺②」参照。
※ 債権執行の仕組みについては、平成21年度第2回試験・問題36参照。


正解:①



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